健康やダイエットのために、食事の時、一口30回以上噛んで食べるのが良いなどとよく言われています。
厚生労働省では「噛ミング 30(カミングサンマル)」というキャッチフレーズまで作成してこれを奨励していたり、「よく噛むダイエット」などのタイトルでたくさんの記事が紹介されていたりします。
さて、これを実践したらどうなるか。
健康になるとか、長生きできるとか、一ヶ月続けると痩せるとか、そういうのは今回の話には関係なく、「食事の時間がどうなるか」に置き換えて検証してみました。
検証に使ったメニューは「カレー」。
そもそもあまり噛まずに食べることが多そうなメニューですが、検証結果を際立たせたいのであえてカレーにしてみます。
実験者に、意識せずに普通の状態でカレーを食べてもらうと、一口で噛んだ回数は平均すると約11回、一皿を7分で食べ終わりました。
次に、意識して一口で30回噛んでもらうと、一皿を食べ終わるのに17分かかりました。
カレーの場合、「一口で30回噛む」を実践すると、食事にかかった時間は「17÷7」で、約2.4倍となります。
さてこれを、オフィス街にあるカレー屋さんで、ランチタイムに決行したらどうなるか。
オフィス街にあるカレー屋さんのランチタイム(12時~13時の1時間)は、常に満席状態でフル回転しています。お客さんが店に入って注文し、5分でカレーが出てきて、通常であればそれを食べ終わるのに7分。店に入ってから出るまで計12分。つまりランチタイムにはお客さんの人数が「5回転」していることになります。
「一口で30回噛む」を実践すると、店に入ってから出るまでは22分。これをお客さん全員が実践したとしたら、人数は「2.7回転」ということになります。
カレーが700円だとすると、ランチタイムの売上が下記のようになります。
<10席のお店の場合>
●通常の場合・・・700円×5回転×10席=35,000円
●30回噛む・・・700円×2.7回転×10席=18,900円(その差 16,100円)
<20席のお店の場合>
●通常の場合・・・700円×5回転×20席=70,000円
●30回噛む・・・700円×2.7回転×20席=37,800円(その差 32,200円)
これはなかなかの売上減です。
よく噛むのは良いことに間違いなさそうですが、「回転率が勝負」というようなお店では、混雑時には控えてあげた方がいいかも知れませんね。