世の中には、カッコ悪い病名というものがあります。
「カッコ悪い病気」ではありません。「カッコ悪い病名」です。
もちろん病気にカッコ悪いもカッコイイもありませんが、「病名」にスポットを当てたときに、その病気や症状を表す言葉の響きや耳触り的に、どうしても「なんだかカッコ悪い感じがするなぁ・・・」と思ってしまうものがあります。
今回は、他人に言うときに何となく恥ずかしくなってくる病名「カッコ悪い病名」を正式名称に置き換えてみて、カッコ悪さが半減できるように何とかしてみたいと思います。
痔(じ)(ぢ)
発音としては「じ」ですが、文字として「ぢ」と表現されることもあり、どちらにしても言葉の響きとしてカッコ悪い感じがしてしまいます。
痔とはそもそも、肛門周辺の病気の総称として使われている表現です。
痔には「いぼ痔」「きれ痔」「あな痔」の三種類があり、それをまとめて「痔」と呼んでいるということになります。
なので「痔」自体に正式名称はありません。
さて、実際に他人と会話するシーンを見てみましょう。
「私、"じ" を患っておりまして、長時間座る作業は避けたいんです」
「何痔ですか?」
「いぼ痔です。」
こんな感じになると思います。
「痔」という音だけでもカッコ悪い感じなのに、さらに「いぼ痔」とは、これまたカッコ悪い耳触りです。「いぼ」という音がそもそも味わい深すぎます。
では、この三種類の痔の正式名称を見ていきましょう。
- <いぼ痔>
正式名称は「痔核(じかく)」と言います。さらにこの痔核は「内痔核」と「外痔核」に分けられます。単に「じかく」と表現するより、実際の症状にあわせて「ないじかく」「がいじかく」と表現した方が、よりカッコ悪さが半減するように思います。 - <きれ痔>
正式名称は「裂肛(れっこう)」と言います。「じ」という音自体がなくなったので、これだけで十分です。カッコ悪さが半減しています。 - <あな痔>
正式名称は「痔瘻(じろう)」と言います。さらにこの痔瘻は「低位筋間痔瘻」や「高位筋間痔瘻」に分類されるので、「ていいきんかんじろう」「こういきんかんじろう」と表現した方が、よりカッコ悪さが半減するように思います。
「私、"がいじかく" を患っておりまして、長時間座る作業は避けたいんです」
随分とマシな表現になりました。
水虫
「水虫(みずむし)」はもちろん俗称です。
足にできる水虫の正式名称は「足白癬(そくはくせん)」と言います。
「水虫で足がかゆくてたまらない」
何だかカッコ悪いです。あまり他人言いたくないです。
「かゆみ」にも、ちょっと医学的な表現があります。「瘙痒(そうよう)」と言います。これもまとめて置き換えてみます。
「水虫で足がかゆくてたまらない」
↓
「"そくはくせん" で "そうよう" が治まらない」
かなりカッコ悪さが減りました。
反面、何の事を言ってるのか、さっぱりわからなくなってしまいました。
でもそれでいいんです。
他にも・・・
何となく他人に言う時にカッコ悪く感じてしまう病名や症状を表す言葉はまだまだあります。
以下まとめてその正式名称を挙げておきます。
- わきが →「腋臭症(えきしゅうしょう)」
- いんきんたむし →「股部白癬(こぶはくせん)」
- でべそ →「臍ヘルニア(さいヘルニア)」
- おたふくかぜ →「流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)」
- 吹き出物 →「尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)」
病気にカッコいいもカッコ悪いもありません。
でもその病気や症状を俗称や通称で表現する場合、「病名」がカッコ悪いおかげで、「病気」そのものがカッコ悪いというイメージに置き換わってしまうことがあるようです。
俗称や通称レベルでは、どうしてもカッコ悪いイメージになってしまう病名も、正式名称に置き換えて、そのイメージを半減できればいいですね。